白衣の独り言

良いことも悪いことも、人生には必要みたい。それでもやっぱりできるだけ、悪いことは少なめであって欲しいから、みんな頑張っているんだね。

2008年7月30日水曜日

信じられない話



プレドパ、という薬があります。

カタボンともいいますが・・・血圧を上げる、昇圧剤。


先日の夜勤で、ある患者さんが急変し、意識レベルも下がり血圧も下がってしまいました。

朝のばたばたした時間の中、点滴でそのプレドパという薬を使い始めました。

一時は血圧が50台まで下がってしまったその方は、ようやく80台まで上昇。それでもとても危険な域です。

脈拍も夜120くらいあったのが、朝には70まで下がってしまったので、これはもうそろそろだね・・・という話になり。

前日から、その日やるかどうするか医師が迷っていた「アルブミン」という薬は結局医師の指示で中止になりました。


私は夜勤で彼を受け持っていて、プレドパを開始し、家族に電話するまでが勤務時間内の出来事。

家族は家が遠くて、2時間はかかるとのことでした。

なんとか家族が来るまで・・・。

ナチュラルコースでしたが、昇圧剤だけは続けましょうということに。


さて、ここからが、とても信じられない話・・・。

その日、日勤で彼を受け持つのは二年目の子。

少し、みんなから「できない」と言われてしまっているような・・・。


アルブミンが中止になった、という話は日勤で確認していました。

「あの、中止でいいんですよね」

彼女の日勤のリーダーに対する確認のしかたはこうでした。

点滴のワークシートを見ながら。

「あーそうそう、中止だよ」

リーダーはこんな感じで答えていました。それを私は通りすがりに聞いてました。



そして彼女が中止したのは、プレドパ



止まっていた時間は数分で、すぐに他の看護師がそれを見つけて再開にしたんですが、

彼女は「リーダーに止めろって言われて・・・」


「血圧低いのにプレドパ止める馬鹿がいるか!!」

さすがに温厚だと言われている若い医師も、怒鳴りました。

「そうですよね・・・」

 ・・・じゃないだろ!!!


 大問題、です。

リーダーは「アルブミン中止」と言ったと言い、それを彼女は「プレドパ中止」とリーダーが言ったと。

どちらが本当か、もしかしたら、リーダーが薬の名前をこんがらがって間違えた可能性もなきにしもあらず。リーダーさんもちょっと、な感じの方だったので・・・。

ただ一番問題なのは、彼女がプレドパの作用を知っていながら「リーダーに中止と言われたから」といって止めたこと。

あんな状態の患者さんに、普通プレドパ止めるはずがない。

なのに、勘違いしたとはいえ、リーダーの指示だからと止めてしまうなんて。

そこで一声、昇圧剤なのにいいんですかってリーダーに確認する勇気があれば、勘違いだって起きずにすんだかもしれない。あれ私今プレドパって言ったっけ? アルブミンだよ、ってことになったかもしれないのに。


ここまでが、みんなの見解。


もうひとつ、信じられない話が。

私はその子と結構仲が良かったので、心配でした。

あとから知ったことですが、

プレドパを止めるとき、リーダーが横にいたそうです。


患者さんの元へ行き、

これでいいんですねと、彼女はリーダーと一緒にそのものを実際に見て確認をし、

リーダーと一緒に、プレドパを止めたそうです。


リーダーは問題があったその日、みんなが彼女を責める中、ずっと「アルブミンを止めるって言った」と言い、実際に一緒にいってプレドパを止めたなんて、誰にも言ったりしませんでした。

信じられない。

酷い。

ずるい。

汚い。

仮にも看護師。自分のミスも認めずに人のせいに。

確かに実際止めたのは彼女で、一番反省しなければならないのは彼女。

でも。


彼女はそれを、リーダーに実際に返せない、と言っていました。そんなことできない。

仲のいい数人にだけその話をして、結局、みんなは彼女一人の責任として受け止めている。

でもそれはやっぱり、師長には伝えないと。一番上の師長はきちんと全てを把握していてもらわないと。

師長にはきちんと事情を説明して、

「でも彼女がリーダーには何も言わないでくれというので、私も黙ってるしかないわ」と、その話を二人でしたとき師長は溜め息を。

それでもやっぱり、どんな事情があろうと、プレドパを実際に指で止めたのは彼女。その責任は彼女にあって、それはちゃんと反省しなさい、と師長は彼女に伝えたそうです。


悔しいだろうけど、悔しいだけで終わってはいけない。全てリーダーの責任にしてはいけない。

悔しさだけを残しては、何もこの失敗から学べない。


良い人の集まりなんて、集団ではありえない。

看護師にもいろんな人がいて、理不尽な人もいれば、何も言えずにただ耐える人もいる。

それでも患者さんを前にしたら、そんなこと関係なしに、彼らを守らなければ。

私達はプロ。失敗したら学び、改め、活かす。

それでも残った感情は、どこかでちゃんと収拾して、折り合いをつけて・・・。


やっぱり看護師って、辛くてきつくて、難しい・・・。


それでも私が、彼女が、この仕事を続けていくのは、きっとそれを上回る何かを日々仕事で手にしているから。


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2008年7月24日木曜日

特別

彼がなくなったとき、

夜勤の先輩に、

「あまり堂々と来ない方が良いよ。彼だけ特別扱いってわけにはいかないんだからね」

と言われました。


言われれば、確かに彼は特別。

でもだからって他の患者さんとケアに差をつけた覚えはないし、

お見送りをしただけで、誰かに迷惑をかけた覚えもない。

お見送りした、しないということで、患者さんのご家族に「差別」と言われることもない。


ずっと関わってきていて、最後は看取りたい。

自己満足だということもわかってる。

医師は、「夜でも何かあったら主治医の僕を呼んで」と言えるけど、

いくらプライマリーであっても看護師を呼ぶことはない。

それこそ、ずるいなぁ、って思うこともある。

彼らは許されるのに。


彼の主治医だった例のS医師は、何かあったら夜でも絶対に知らせてと看護師に言いまわってた。

でもいつも、呼んでも来るのが遅いか来ないかで、自分の患者さんが亡くなったとき家族に必ず解剖の話を持ち出していた彼は、夜勤の先輩達に「どうせ呼んだって来ないし、ゼクの話とかしちゃうんでしょ」と、朝師長が連絡するまで彼が亡くなったことを知らされずにいた。

「こういうときに普段の行いが出ちゃうのよね」
と師長は溜め息。

当然怒り狂ってたけど、「急変時主治医コール」とカルテには明記していなくて、夜勤者は突っぱねて終わった。

「今日中に彼に会ってきます」と言って、自宅まで行ったらしいと師長が言ってた。

それは、いいのかな。

いいなぁ。

私はただの看護師だから、やっぱり、そういうの、駄目なんだろうな。


こういう仕事をしていて、どんなに公平云々って言われてたって、「看護師とは・・・」って言われてたって。

特別な患者さんが出来るのは仕方ないことだと思う。

誰だって、心に残るひとはいるはず。


なんだか、彼が亡くなったことに加えて、特別扱いだと先輩に言われて。

力が抜ける感じがした。


それでも、その先輩と同じ夜勤を昨日して、笑顔で接して、

S医師とも、二年間ありがとうございましたと会話を交わして。

日々は普通に過ぎて、

私だって、何かが変わるわけではない。


ただ彼の笑顔を時々思い出して、

駄目になりそうな日々、彼に少しの勇気を分けてもらって、

これからも、看護師を続けるんだろう。


色んなことを覚悟の上で、深入りした。

看護師倫理がどうこうなんて、そんなもの、なんだっていうんだ。


 どんなに人に駄目だよって言われたって、

  彼は私の特別な患者さんだから。


賛否両論。でも私は私。  ↓皆さんの元気なブログへ↓
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2008年7月18日金曜日

さよなら

今朝、私の大切な患者さんが亡くなりました。


付き添っていた奥さんと、駆けつけた娘さん達に看取られて。

日勤だった彼が連絡をくれ、お迎えまでに白衣に着替えて、最後の顔を見ることが出来ました。


家で連絡をもらって、病院に行って、着替えている間、実感がわかなくて、

病棟に上がったとき、ロビーにいたご家族を見たら、急に。

そして既に綺麗にしてもらった彼の顔を見たら、そのまま、涙が止まらなくなった。


私は家族じゃない。

ただの看護師。


彼の顔を見て、ただ涙が。

何かを思い出すことも、何かを考えることもできずに。


ほんとなら、プロなら、涙なんか。私なんてただの看護師で、ご家族の過ごしたこの何十年という月日に比べたら、私なんて。


大切な患者さんでした。大切で、大好きで。


穏やかな顔で、両手を組んで。

きっとこの最後の日々、ご家族と一緒に、それはきっと、穏やかに。


そうであったことを願って、

さよならを。


どうか安らかに。  
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2008年7月12日土曜日

最後の、日々

私の大切な患者さんが、

今、レベルⅢ-200まで意識が下がり、

血圧も、80台から100台で、ここ2、3日を経過しています。


彼が急に状態変化してから、ほぼ一ヶ月。

勤務のときはできるだけ顔を出して、

だんだん、状態が悪くなるのを傍で見てきました。


出会って二年。

彼の闘病を、家族の支えを、彼らの静かで穏やかな心の強さを、傍で見てきました。

彼らには私の知らない日々も、辛い、苦しい日々もあったでしょう。

初めて見た、奥さんの涙。


どうか最後の日々は、穏やかに。


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2008年7月3日木曜日

もう、勤務時間始まってますけど。



前回の夜勤は最悪でした。

今まで4人夜勤だったのが、3人に減らされ、患者さんは多くて不穏も重症もいて。

案の定ちょうど締めの時間、0時前にひとり、患者さんがお亡くなりになり。

朝方には、夜中ずっと脈拍150台だった90歳代のおばぁちゃまに瞳孔左右差が。意識レベルも一気にダウン。

そしてその主治医は、例のS医師。

時刻は朝8時半。出勤のお時間です。

なので電話しました。院内のPHSに。

・・・つながりませんね。

おかしいですね。いるはずの時間です。

でもまぁどうせそんなことだろうと思い、院外にかけてもらったけど、留守電に。

なので留守電に残して、当直でずっと相談していた女医さんに状態を説明して、とりあえずナチュラルな方向の方だけれど、CTのオーダーを入れてもらいました。

そんなこんなで9時過ぎになりました。

そろそろ病院にいてもいい頃でしょう。ていうかいなきゃいけない時間です。

院内に電話かけてみました。

・・・・・・つながりませんね。

・・・・・・。

院外にもう一度かけてみました。

15秒ほどまって、留守電に切り替わったと同時に「あ、もしもし」とのお返事。

「ごめんね、話し中で」

・・・・・・。

いえ。つながってませんでしたから。あなたの院内PHS。

「あれ、おかしいな。9時前には病院にいたんだよ?」

 嘘を付け。

「まぁいいや、アニソコでたの?」

という感じで、患者さんの状態を説明。

「先生そこからカルテ見れます?」

医局にいるなら、電子カルテで患者さんの情報を見れるはずなので、そう聞いたら、

「いや今うちでるとこだから。今CT行ってるの? 今からCT室行けば落ち合えるかな」

「そうですね、今行ったばかりなので多分・・・」

・・・・・・って、 

ん、ちょと待って?

巻き戻してみて?

 「今うちでるとこだから」?

あんたさっき、病院にいるって言わなかった??


 ・・・・・・。


とりあえず今すぐ行くから、と言った彼は30分後に病棟へ到着。

うん、

嘘を付いたら嫌われるよって、誰かに習いませんでした?

信用がなくなるよって、誰かに教えられませんでした?

我々看護師、S医師を白い眼でお迎えしました。


医療の現場は、信頼関係がとても大事です。

患者さんと医師の間に留まらず、スタッフ全員が、好き嫌いはあっても信頼関係がなければ。


うちの病棟、S医師に関しては、信用のシの字も持てなくなりつつあります。

嘘も言い訳も、通用しなくなる日はすぐそこなのに。


私、自分の為だけに嘘を付く人、嫌い・・・。  ↓皆さんの元気なブログへ
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