先日の夜勤は病棟リーダーでした。
相変わらず、次々に来る入院。えっ今日は小児科二次だったはずなんですけど。内科二次の間違いでしたか。と突っ込みたくなるほどでした。
17時半から21時までに7人の入院。病棟でリーダーとメンバーあわせて二人でこの数を捌くのは結構大変。
予定ではなく救急での入院ですから、それなりに皆さん重症です。
そしてその7人の入院のうち、1人、亡くなられた方がいました。
入院したときには既に下顎呼吸で、レベルも3桁。瞳孔は散大、血圧は測れない状態。
DNRとの事で、昇圧剤も使用せず、ご家族が付き添っていました。
徐々に脈も伸び、入院して1時間後にはフラットへ。
付き添っていたご家族に声をかけ、医師を呼んで、死亡宣告。
ご検体に出されるとの事で、大学病院と連絡をとりお迎えにきてもらい、夜勤師長を呼んで。お見送りをさせていただきました。
そんなことがあった、とても忙しかった夜勤。合間の落ち着いた時間に、救急外来をまわしていた先輩がふと「ちょっと聞いて・・・」と疲れた声で話してきました。
亡くなった方のことです。
その患者さんの来院の電話を受けたのは彼女。まだ日勤も残っている時間帯、施設から来た方だったんですが、既に施設で下顎呼吸、血圧も70台、レベル低下と聞いて、すぐに来るよう伝えました。
彼女はそのまま小児科の点滴介助へ。これは個室で部屋を閉めて行うので、外来のことはもう一人の看護師に託されます。
で、15分くらいで終わって出てきたら、その患者さんが車椅子に座って救外の待合室にいたそうです。
もう一人の看護師に「まだ何もしてないの?」と聞くと、その子も既に他の外来患者さんたちでいっぱいいっぱいで「まだです!」と。
見るからに具合が悪そうで、とりあえずバイタルを測ろうと血圧を測り始め、一緒にいた施設の方にご家族に連絡しているのか、DNRなどの話は今まで家族との間に出ているのかなど情報収集を始めました。
そこに、
救急認定看護師でもある、うちの救急センターの主任がやってきました。
彼女は日勤で、部長に報告に行く通りすがりだったようです。
「なに、なんでこの人ストレッチャーに寝させないで座らせてんの?」
開口一番。
「いや、とりあえず先にバイタルをと思って」
「先生呼んでるの? 早く横にさせなくていいの?」
「今日は ・ ・ 先生が当番だから、今救急にいるので」
「あれ下っ端じゃない。もっと上の先生じゃないとだめじゃん」
といって自分で上の先生を呼んで、そのまま部長の所に行ってしまいました。
「何もしてなかったのは確かにまずいと思うんだよ。でもね、私点滴についてて患者さん来たこともわかんないし、もう一人の子がやらなかったわけで、私に言われても困るわけなんだよ・・・」
先輩は溜め息をついて言います。
この先輩は脳外と呼吸器を回り、産休明けで救急センターに配属になった方。実は私が脳外で入院したときにお世話になった方で、もう看護師11年目。
「じゃぁあの状況でバイタルも測らずにストレッチャーに先に乗せればよかったのかな。それってそんなに大事な事?」
とにかく患者さんの状態を把握するのが先だったのでは。彼女はそう言います。
そのときはそんな愚痴で終わりました。
けど、
朝になって。
その夜勤は本当にばたばたして、休憩も1時間もとれませんでした。先輩が外来の合間をぬって手伝いに来てくれて、それがなければほんとに終わらなかったでしょう。
そんな夜勤を、なんと定時で! 終わらせて。
これもみんなの協力の賜物。笑顔で帰れる! なんて思いながらカンファレンスルームに戻ったら。
認定看護師の主任と、先輩が、二人で話していました。
主任はすぐに部屋を出ましたが・・・先輩はその後、涙ぐみながら話しました。
「なんで医師からでなく看護師がDNRを確認するのか」
そう、言われたそうです。
先輩はただ、今までにDNRの話が出たことがあるのかと施設の方に尋ねていただけ。
……というか、私もきっと確認します。DNRか、そうでないのか。
まだはっきりしないにしろ、その先の指標は必要です。もし望んでいなかったのに、人工呼吸器をつけてしまったら?
「何の確認もせずとにかくフルコースなんて・・・それでもし希望もせずレスピつけられたりしたら辛いのは患者さんでしょ? 私はそういうのいっぱい見てきた。DNRとか今までどんな話が言ってたのか確認するのは普通でしょ? もしDNRなら無理なことはしないし、わからなかったらそりゃ家族と連絡取れるまでフルでやるんだし、どうして・・・」
先輩はそう言って、悔しいと、納得がいかないと、涙を流します。
「基本的に、救急の場は救う場であって、家族がいなくてDNRが確認できないなら、フルコースだよ」
以前主任はこう言っていたことがあります。
「ほんとは高齢だから何もしないとか、そういうことはあっちゃいけないんだよ。高齢だからもういいでしょとか、そんなのほんとはいけないんだよ」
確かに、
彼女の言うことは間違いじゃない。
でも、私や先輩は、望んでもいないのに人工呼吸器をつけられた方を何人も知っています。
カルテに書かれていなかったから。家族が間に合わなかったから。家族の気が動転して、医師の言葉をしっかりと聞いておらず頷いてしまったから。
最初は何度もお見舞いに来ていた家族がどんどん離れていき、
1ヶ月後には、個室料金と人工呼吸器という医療費に顔を顰めるようになり。
痰が詰まっても吸引しないでいいです。気管切開? しなくていいです。
そんなご家族もいる。
患者さん本人だって希望しなかったのに。
慢性期を経験した看護師は、きっとDNRという言葉が身に付いている人が多いでしょう。むしろ高齢な方にフルコースといわれると「えっ」と思う人が多い。
でも、主任は救急のプロ。
彼女は新人の頃から救急で働き、もう15年くらいになるといいます。
病院は、命を救う場所。
DNRという言葉がどうして先にくるのか。それはおかしいのだと。
彼女の言葉は、正しいのか?
正しかったとしても、それが全てではないでしょう。
自分がどう考えるのか。それはひとそれぞれです。
そして患者さんも、家族も、それぞれです。
ひとつの方向に持っていくことはできない。
主任もそういっているわけではないでしょう。
最初からフルコースのみ、最初からDNRのみ。そんな考えではやっていけない。
けれど救急センターで働く限り、基本的な考えが救命ではなくDNRになってしまうことは問題なのだと。
呼吸器を経験し、私や先輩は、静かに看取られるべき方達がいろいろなことをされて亡くなるのを見てきました。
命を救うために私達がいる。
でも、命を看取るためにも、存在しているのだと。
救急のプロからしたら、おかしい考えだと思われるかもしれません。救えるものを歯痒いと、思うかもしれません。
けれど希望せず呼吸器に繋がれた命を、救ったのだと、私達看護師は笑顔で言えるのでしょうか。
それは、エゴ、ともいえるのではないでしょうか。
救急外来で働いていて、CPAが来たらもちろん心マし、蘇生を試みます。
でも私はどうしても、ふと頭に「この人はDNRじゃないのか」というフレーズが頭をよぎる。
きっと主任に迷いはありません。DNRと方針が決まらない限り、全力でその患者を助ける。
私は救急には向いていないのかもしれない。
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